WordPressのAbilities APIは、サイトが実行できる操作を名前・入力・権限付きで登録する仕組みです。MCP Adapterを追加すると、そのうち公開対象にした操作をAIクライアントに渡せます。ただし、WordPressを更新しただけ、あるいはMCP Adapterを入れただけで、ChatGPTから記事の作成・公開が一律にできるわけではありません。操作そのものがサイトに実装・公開され、接続と権限が通る必要があります。
この記事では、公式資料で確認できる仕組みと、個々のサイトで設定・検証が必要な部分を切り分けます。確認日:2026年9月26日。WordPressの更新やプラグインの変更によって画面・設定は変わるため、導入時は末尾の公式資料を再確認してください。
この記事のポイント
- Abilities APIはWordPress 6.9以降に搭載。操作を登録・発見・実行する共通の土台です。
- MCP Adapterは、その操作をAIクライアントへ橋渡しする別の導入物です。公開する操作はサイトごとに決めます。
- 「接続できた」と「下書きを作れる」「公開できる」は別の確認項目です。最後は実操作と権限で判定します。
AI連携の土台はある。でも、万能の編集権ではない
Abilities APIの公式説明は、WordPress内の機能を「Ability」という単位で登録し、名前、説明、入力・出力のスキーマ、実行処理、権限判定を持たせるというものです。たとえば「サイト情報を読む」というAbilityと「記事を下書き保存する」というAbilityは別物です。前者が見えたとしても後者があるとは限りません。
WordPress公式のMCP Adapterは、このAbilityをMCPのツールなどに変換する橋です。AIが使えるのはそのサイトで実際に登録され、MCPに公開され、認証済みユーザーに許された操作だけ。文章で「公開して」と頼むこと自体は権限になりません。外部から使う際は接続方式と認証も必要です。
Abilities API、MCP、AIクライアントは別の役割

Abilities APIは「サイトの操作一覧と実行条件」
WordPress 6.9以降の本体に入ったAbilities APIは、プラグインやテーマが機能を登録する共通の台帳です。公式の登録例では、カテゴリー、入力・出力の定義、実行コールバック、permission callbackを指定します。機能の名前があることと、そのユーザーが実行できることは別です。登録だけで、誰でも呼べるようになる設計ではありません。
AbilityをWordPress内部のPHPから使う道と、REST経由で外に見せる道も分かれています。公式RESTドキュメントでは、登録したAbilityは初期状態でRESTには公開されず、公開するには対象ごとの設定が要ると説明しています。実行時にも認証と個々のpermission callbackが働きます。
MCP Adapterは「AIに通じる入口」
MCPはAIクライアントが外部の道具や情報を扱うための共通プロトコルです。WordPress公式のMCP AdapterはAbilities APIとMCPをつなぎ、許可して公開したAbilityをツール等として見つけ、呼び出せるようにします。公式リポジトリはHTTPとSTDIOの接続方式、サーバー単位とAbility単位の権限確認を説明しています。
アダプター自体はWordPress本体のAbilities APIとは別に導入します。公式リポジトリの案内ではAbilityは初期状態でMCPに非公開で、公開対象にする設定が必要です。全Abilityを無差別に公開し、強い権限の認証情報をAI接続に渡す設計は避けてください。読み取りから始め、下書き、公開の順に必要性を確認するのが安全です。
ChatGPTなどは「依頼する側」
AIクライアントは接続済みのMCPサーバーから操作を発見し、入力を渡し、結果を受け取ります。クライアントがMCPに対応していても、対象WordPressのAbilityが登録されていなければ、その機能は使えません。特定のChatGPT画面・プランで接続できるかも、その時点の提供機能とコネクタ設定で確認する必要があります。WordPress公式資料だけを根拠に「どのChatGPTでも標準で投稿可能」とは言えません。
正式にある機能と、サイトごとに作る機能

| 確認するもの | 2026年9月26日時点 | 読者が確認する点 |
|---|---|---|
| Abilities API | WordPress 6.9以降に搭載 | WordPressのバージョンと登録されたAbility |
| MCP Adapter | WordPress公式の別パッケージとして提供 | 導入・有効化、接続方法、公開設定 |
| 記事の下書き・公開 | その操作の登録・公開・権限次第 | 実際のAbility名、権限、保存・公開結果 |
| AIクライアントとの接続 | 対応クライアントと認証設定次第 | 対象サービスの現在の接続手順と許可範囲 |
公式MCP Adapterは実際に公開されているプロジェクトです。一方、「このWordPressサイトで画像登録から記事公開までできる」というのはWordPress本体が保証する標準一式ではなく、サイト側の実装・権限・接続結果の話です。将来の構想や実験的なデモを、現在の全サイト共通機能として数えないようにします。
REST APIとの違いは「代替」ではなく「操作の意味づけ」
従来のWordPress REST APIは、投稿・固定ページなどのデータをHTTPのURLへJSONで送受信する仕組みです。公式ハンドブックは投稿などのエンドポイント、認証後の管理操作を説明しています。これは開発者がアプリを作る際の土台として今も有効で、Abilities APIに置き換わって消えたわけではありません。
Abilities APIは「このサイトで実行できる、名前の付いた操作は何か」をスキーマや権限と一緒に表します。さらにMCP Adapterを使うと、その一部をAI向けの道具として公開できます。REST APIはデータをやり取りする通路、Abilityは実行する仕事の定義、MCP AdapterはAIクライアントへ渡す橋と考えると混同しにくくなります。Ability自体も設定すればREST経由で呼べるので、RESTとAbilitiesは敵対する二択ではありません。
例を挙げると、REST APIの投稿エンドポイントを使うアプリは投稿データを作成できます。一方、サイト独自の「記事の出典を確認して下書き保存」というAbilityを用意すれば、入力や出力、権限をその仕事に合わせて定義できます。ただし後者はあくまで実装例であり、WordPressが標準でこの名前のAbilityを備えるという意味ではありません。
自分のサイトで「AIから操作できる?」を確認する5項目
- WordPressのバージョンを見る。Abilities APIは6.9以降です。古い環境なら先に互換性を確認します。
- 必要な操作が登録されているか探す。「サイト情報の取得」だけでなく、欲しい下書き保存や公開のAbilityが実在するか、名前と説明を照合します。
- 公開経路を確認する。内部PHP専用、REST公開、MCP公開は同じではありません。使う経路にそのAbilityが露出しているかを見ます。
- 認証と権限を確認する。接続成功だけで判断せず、対象ユーザーがそのAbilityを実行できるか、読み取りと書き込みの権限差を確かめます。
- 安全な小さな操作で結果を検証する。サイトURLを照合し、読み取りから試します。書き込みは下書きで保存先と投稿IDを確認し、公開は別の権限として扱います。
複数サイトをつないでいる場合は特に、依頼先URLと実際に返ってきたサイトURLの一致が重要です。操作成功の返答だけで終えず、保存された記事のURL・状態・本文を見ます。別サイトの接続が応答した場合、同じ操作をそのまま実行しないでください。
よくある質問
WordPress 6.9へ更新すれば、すぐChatGPTから投稿できますか?
いいえ。更新でAbilities APIの土台は使えますが、必要な投稿操作の登録、MCP Adapterなどの接続、公開設定、認証・権限の確認が別に必要です。AI側の対応も含めて、個々の環境で実行結果を確認します。
MCPを使えばREST APIは不要ですか?
不要にはなりません。REST APIは投稿データなどのHTTP・JSONのインターフェースとして使われます。Abilities APIもRESTで公開でき、MCP Adapterは公開対象のAbilityをAIクライアントへ橋渡しします。目的と接続先に応じて併用します。
接続テストが成功したのに公開できないのはなぜ?
接続と公開は別の権限です。公開用Abilityがない、MCPに公開されていない、認証ユーザーに権限がない、入力の形式が合わない、といった点を順に確認します。権限エラーを別の接続先へ切り替えて回避するのではなく、サイト管理者が許可範囲を点検します。
まとめ
Abilities APIはサイトの操作を定義する土台、MCP Adapterはその一部をAIにつなぐ橋、REST APIはWordPressのデータをHTTPで扱う通路です。問うべきは「AIがWordPressを操作できるか」だけでなく、「このサイトで、誰に、どの操作を、どの状態まで許すか」です。下書き保存と公開を分け、対象URLと保存結果まで確認すれば、できることを過大にも過小にも評価せずに済みます。
参考にした情報
- WordPress Developer Resources「Abilities API」:機能登録、スキーマ、権限、WordPress 6.9以降の根拠。
- WordPress Developer Resources「Getting started」:WordPress本体への搭載と登録例。
- WordPress Developer Resources「REST API endpoints」:REST公開の初期設定、認証・権限。
- WordPress公式「MCP Adapter」:MCPへの橋渡し、公開設定、接続方式。
- WordPress公式「MCP Adapter Releases」:配布済みバージョンと変更履歴。
- WordPress Developer Resources「REST API Handbook」:従来のREST APIの役割。
情報確認日:2026年9月26日。掲載した操作例は仕組みを説明するための例であり、どのWordPressサイトにも同じAbilityが標準登録されていることを示すものではありません。
